2024年04月26日 カテゴリ:眠り

睡眠中の歯ぎしりの原因は対策する方法や改善法はある?実は「良い」「悪い」もある!?

loading
睡眠中の歯ぎしりの原因は対策する方法や改善法はある?実は「良い」「悪い」もある!?
睡眠中、無自覚に起こる「歯ぎしり」。

歯ぎしりは、まばたきやあくびと同様の生理現象。歯ぎしりをしない人はほとんど存在せず、「私はしてないよ」という人も、単に自覚していないだけの可能性が高いんです。
 
そこで今回は青木歯科の院長・青木聡先生監修のもと、歯ぎしりの原因や、歯ぎしりがもたらすさまざまな影響をご紹介。

さらには良い歯ぎしりか、悪い歯ぎしりかがわかるセルフチェックやセルフケアまで、余すことなくお届けします! 
   

歯ぎしりとは?

そもそも、どうして私たちは歯ぎしりをするのでしょう?
 
「歯ぎしりが起こる原因は、完全には解明されていません。ただし、歯ぎしりは人類の進化の名残という説があります」(青木先生)。
 
人類の進化の過程をさかのぼると、「人間の祖先は魚類」と考える学説があるのをご存知でしょうか?

魚類が進化によって陸に上がり、さらなる進化を経て人類が誕生したというのです。
 
魚類の特徴といえば、エラ呼吸。睡眠中にも、もちろんエラの動きは止まりません。

青木先生の言う「歯ぎしりは人類の進化の名残」とは、「エラの動きの名残が咀嚼を司る筋肉に表れ、睡眠中に歯ぎしりが生じるのではないか」ということです。

また、歯ぎしりと聞くと、一見ネガティブな現象のように思えますが、「歯ぎしりには、良い歯ぎしりと悪い歯ぎしりがあります。良い歯ぎしりであれば、むしろポジティブな現象です」(青木先生)。
 
というのも、歯ぎしりにはストレス解消の効果が認められるそう。緊張状態にあるときに優位に働くのが交感神経ですが、無意識下の歯ぎしりが交感神経を抑制するというのです。
 
歯ぎしりの良い面は、ほかにもあります。「逆流した胃酸によって食道に炎症が起きる、『逆流性食道炎』の緩和です。歯ぎしりという口の動きによって唾液が分泌され、その唾液が胃酸を中和。炎症を防止する効果がわかっています」(青木先生)。

 

歯ぎしりは眠っているときだけではない?

歯ぎしりは睡眠中に起こる現象ですが、起きているときにも歯ぎしりは起こるのでしょうか?

「歯ぎしりは睡眠中に無意識に起こる現象で、目が覚めている状態では起こりません。

ただ気をつけたいのが、日中の“歯の食いしばり”です。

ストレスを感じたりすると、歯を食いしばる癖が出ていないでしょうか?

歯を食いしばる癖がある方は、歯の擦り減りやヒビの原因にもなりかねないので、後述する『歯ぎしりの解消法』を参考にしてみてください」(青木先生)。
 

歯ぎしりにも種類がある?

歯ぎしりには良い歯ぎしりと悪い歯ぎしりがありますが、悪い歯ぎしりとは、一体どんなものなのか。

それを理解するには、歯ぎしりのことをもっと知らなければなりません。大きく分けて、次の3タイプがあります。
 

【1】「グライディング」タイプ

…ギリギリと上下の歯をこすり合わせる歯ぎしり
 

【2】「タッピング」タイプ

…カチカチと上下の歯を連続的にかみ合わせる歯ぎしり
 

【3】「クレンチング」タイプ

…ただ歯を強くかみしめる歯ぎしり
 
なんと、【3】のクレンチングタイプのように、音をさせない、強くかみしめるだけの歯ぎしりもあるのです!

ただでさえ自覚が難しい歯ぎしりですが、「歯ぎしりはしてないよ」という人も注意が必要です。 

また、歯ぎしりと睡眠の関係も明らかになりつつあります。睡眠中の脳波を調べると、歯ぎしりが起こる5秒ほど前に「マイクロアローザル」という微少覚醒が見られるそう。

この微少覚醒という短い目覚めの反応が、アゴの筋肉を活動させ、歯ぎしりを引き起こす引き金になっていると考えられるのです。

 

あなたは歯ぎしりしている?セルフチェック方法

では、あなたの歯ぎしりは、悪い歯ぎしりなのでしょうか?
それを知る手がかりとなるのが、青木先生監修のチェック表です。
 
【1】歯の詰め物がよく外れる
【2】起床時にアゴが痛い、ダルい
【3】歯がしみる
【4】歯が欠けた、割れた、すり減った
【5】歯の根元にくさび状の凹みが見られる
【6】頬の内側や舌に歯の跡が付いている
【7】上アゴの真ん中あたり、または下アゴの歯の内側に骨が出っ張っている(骨隆起)
【8】食いしばりで目が覚めることがある

 
上記の8項目のうち、1つでも当てはまる項目があれば、悪い歯ぎしりをしている可能性があります。
見た目でわかる変化

歯ぎしりの原因とは?

歯ぎしりには3つのタイプがあることがわかりました。

ところで、そもそも歯ぎしりの原因とは何なのでしょうか?

青木先生は「かつては異常習癖悪習癖などと言われていましたが、近年は睡眠の深度に関連した中枢性(脳が関連するもの)の因子が原因と考えられています」とし、大きく下記の3つが原因であると言います。

 

【1】生理的な現象

【2】喫煙、カフェイン、アルコール、麻薬などは歯ぎしりを増悪させる

【3】生活の中のストレスも歯ぎしりと関係している


「ほかにも睡眠時無呼吸症候群とも関連していると言われています」(青木先生)
 

歯ぎしりの症状・悪影響

歯ぎしり自体は生理的なものであり、それ自体が病的なものとは限りません。

しかし噛み合わせの悪い人が強い歯ぎしりをする場合には、その悪い影響があるものと考えています。

「悪い歯ぎしりによって引き起こされるのが、口腔内環境の悪化です」(青木先生)。

具体的な内容について見ていきましょう。

【1】歯・インプラント等に現れる症状・影響

まずは歯そのものへの影響が考えられます。

歯ぎしりにより歯が擦れることで、すり減り、ヒビ、欠ける、詰め物が割れる、外れることがあります。

虫歯を治療して、歯に詰め物が入っている人は珍しくありませんが、歯ぎしりにより強い圧力がかかると、歯と詰め物のあいだにすき間ができるようになるといいます。

このすき間に食片(食べ物のカス)が入り込み、せっかく治療した歯が、再び虫歯になる環境を作り出してしまうのです。
 
歯ぎしりの圧力は詰め物だけでなく、歯そのものにも影響を及ぼします。

過度な圧力がかかり続けると、歯の表面を覆っているエナメル質がすり減ったり、歯にヒビが入ったり、ときには欠けてしまうこともあるそう。エナメル質がすり減れば象牙質(歯の主体となる硬組織)が表面に露出してしまい、知覚過敏が起こります。

また、歯のヒビや欠けは細菌の温床となります。やはり、口腔内環境の悪化に直結するのです。
 
このような事態を引き起こすのは、驚くほど強大な歯ぎしりのパワー。
 
「歯をかみ合わせるときに生じる力を『咬合力(こうごうりょく)』といいますが、食事のときに生じる咬合力は約30kg。これだけでも大きな力ですが、睡眠中の歯ぎしりで生じる咬合力は、なんと50~100kgを超えるともいわれているのです」(青木先生)。

【2】歯茎・歯周病に現れる症状・影響
 
「歯ぎしりによって歯のヒビや欠けは細菌の温床となると、歯茎の腫れや歯周病にも影響があります。

すでに歯周病や虫歯になっている方は、歯ぎしりによる細菌の増加によって、症状が悪化する可能性もあるので注意が必要です」(青木先生)。

【3】骨に現れる症状・影響
 
「歯ぎしりをするのに使われる筋肉は、頬骨付近から下アゴにかけて広がる咬筋や、側頭部に位置する側頭筋。

これらの筋肉に強い負荷がかかり、頬やアゴの痛みや頭痛が生じるのです。咬筋や側頭筋は首や肩の筋肉ともつながっていることから、肩こりや首こりが起こることも珍しくありません」(青木先生)。

歯が植わっている下顎の骨の内側に「骨隆起」という出っ張りが出てきたり、上顎の口蓋正中あたりにも起きたりする場合があります。

重度な場合は顎関節症との関連も疑われます。

「顔面には咀嚼筋と呼ばれる噛むことに関連する筋肉がありますが、食いしばりが強いケースでは咬筋という頬の筋肉が増大するような場合やこめかみのあたりの側頭筋の疼痛が発現する場合もあります」(青木先生)。
 

歯ぎしりの診断・検査方法

歯ぎしり自体は生理的なものであり、それ自体が病的なものとは限りません。

現時点では歯ぎしりについて個々の患者に対して検査して診断するという事は少ないそう。

ただ、近年では健康保険で歯ぎしりを検査する方法も紹介されており、クリニックによっては「ブラックスチェッカー」というや夜間の歯ぎしり時に悪いかみ合わせをしている場所を診断する方法を採用しているところもあります。
 

歯ぎしりの治療方法は?

歯ぎしりに対する対処法としては、それ自体を無くすないし減らす方法と歯ぎしりによって起こる影響を歯科治療的に対処する方法があるそうです。

【1】歯ぎしり行動を減らす方法
認知行動療法とよばれる歯ぎしりを無くすために歯ぎしりをさせないように自己暗示をかける方法があります。

昼間に上下の歯が接触していることを認識した場合には歯と歯を離すよう指導します。

セルフモニタリングとしては日々の行動や精神状態を記録して歯ぎしりの程度と比較する方法やスマホのいびき記録アプリなどで睡眠時の録音をすることも有用なケースがあります。

ただしこれはガリガリと音がするタイプの歯ぎしりにのみ有効で、そのほかにも睡眠指導も重要です。

【2】歯ぎしりによって起こる影響を軽減する方法
歯ぎしりによる害を減らす方法としては、マウスピースをすることによって歯に過度な力がかからないようにする方法が一般的。

歯に悪影響を与える悪いかみ合わせがある場合には、矯正治療やかぶせ物の治療をする方法を行いますが、この方法を実施する場合はきちんとした診査診断が重要で、必ず歯科医師による診断が必要となります。
 

>歯ぎしりを自分で改善する方法はある?

悪い歯ぎしりを改善するには、歯科医による治療が一番ですが、実は自宅で実践できるセルフケアもあるんです!
 
「そのセルフケアとは、睡眠の質を高めることです」(青木先生)。
 
先にもお伝えした通り、昨今の研究から、眠りの浅さが歯ぎしりの一因であることが解明されつつあります。

この研究結果を逆説的に考えれば、睡眠の質を高め、しっかり熟睡することで、悪い歯ぎしりを防止できるのです。
 
「睡眠の質を高めるには、就寝前の行動がカギとなります」(青木先生)。
 
ブルーライトの光によって脳が覚醒しないよう、就寝前のスマートフォンやパソコンはNG。

ぐっすり眠るには熱いお湯に浸かるのは避け、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴法がオススメです。

また、アルコールに入眠作用はないとは言えませんが、アルコールを摂取した数時間後には脈拍が上がり、結果的に睡眠を浅くしてしまうため、晩酌はほどほどに。
 
【関連記事】冷え性さん必見!眠りの質が変わる入浴法
【関連記事】お酒を飲むと眠れる?眠れない?医師に聞く“アルコールと睡眠の関係”
 

 

歯ぎしりの改善には、質の良い睡眠を

歯ぎしりの改善には質の高いに睡眠が重要ですが、寝具に気を使うことも大事なポイント。快適に眠るためには体に合った寝具が欠かせませんが、特に注意したいのが枕の高さです。
 
「枕が高すぎるとアゴが引けてしまい、気道が狭くなりがちです。気道が狭くなると呼吸がしづらくなり、その息苦しさから、睡眠が浅くなってしまいます。枕は高すぎないものがおすすめです」(青木先生)。
 
【関連記事】自分にぴったりの枕選び!オーダーメイドピローを体験
 

***
 

以上、盛りだくさんでお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
 
自覚が難しい生理現象だからこそ、ついつい軽視してしまいますが、青木先生監修のチェック表を見て、まずは睡眠の質を高めるセルフケアを実践してみてくださいね!

青木歯科

青木 聡 院長

東京歯科大学卒業後に大学院に進み、歯科博士の学位受領。虫歯や歯周病のみならずかみ合わせの治療にも注力し、咬合、顎機能診断、矯正治療の研鑽を積む。2005年、総合歯科治療を提供する「青木総合歯科」を開院。現在は「青木歯科」の院名で東京都の西新宿(初台)に移転し、院長を務める。健康な歯とかみ合わせの啓蒙活動も行い、テレビ出演も多数。著書に『あごがつらい、歯ぎしりがひどい、何度も同じ歯で苦しむなら かみ合わせから治しなさい』(アンノーンブックス)がある。

この記事を見た人は
こんな商品に興味を持っています

この記事の関連カテゴリ

最近見た商品

この記事に関連するキーワード

睡眠中の歯ぎしりの原因は対策する方法や改善法はある?実は「良い」「悪い」もある!?

この記事が気に入ったら
いいね!しよう