2024年01月15日 カテゴリ:眠り

歯ぎしりは歯並びを悪くする?小児歯科医に聞く「子どもの歯ぎしり」の原因と対策

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歯ぎしりは歯並びを悪くする?小児歯科医に聞く「子どもの歯ぎしり」の原因と対策

上下の歯をすり合わせる歯ぎしりは、大人だけでなく子どもにも見られます。なかには、寝ている間に、カリカリ、キリキリと音が出るほど強く歯をすり合わせてしまうケースもあり、「放っておいても大丈夫?」と心配になる親御さんも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、子どものための歯科医院『キッズデンタル』代表・小児歯科専門医の坂部潤先生に、子どもの歯ぎしりの原因と対策について伺いました。
   

子どもの歯ぎしりの原因は「歯や顎(あご)の成長に伴うもの」


「子どもの歯ぎしりの原因は、ほとんどが生理的なものです」と坂部先生は話します。
大人の場合は、ストレスが原因の1つとして挙げられますが、子どもの歯ぎしりは「歯や顎の成長に伴うもの」と考えられているそうです。

「幼少期は歯や顎の成長によって、徐々に噛み合わせが変化していきます。子どもの歯ぎしりは、この変化に適応するためのもの。どうすれば適切に歯を使えるのかを、体が学習しようとして起こる生理的な反応なのです」

子どもの歯は生後6カ月頃から生え始め、1歳頃には前歯が、1歳半くらいで奥歯が生えてきます。このような口腔内の変化により、1歳を過ぎた頃から歯ぎしりを始める子どもも少なくありません。

さらに3歳の頃には顎の骨が広がる時期になり、その後、5歳半頃から永久歯への生え変わりがスタート。このような歯と顎の成長期に、歯ぎしりが顕著に現れるそうです。

「すべての歯が永久歯に生え変わる12〜16歳までに起こる歯ぎしりは、生理的なものである可能性が高いです。

ただし、小学校高学年以降は思春期に入ることもあり、歯ぎしりの原因がストレスに起因してくることも。学校生活や友人関係についてストレスを抱えていないかなどの精神的なケアも含めて、向き合っていく必要があるでしょう」
 

過度な歯ぎしりは歯並びを悪くすることも。歯ぎしりの影響と対策


成長に伴って起こる歯ぎしりについては、永久歯が生え変わる頃には落ち着いてくるため、治療の必要はほぼないそうです。しかし、「過度な歯ぎしり」には治療が必要な場合もあるとのこと。

「過度な歯ぎしりによって、歯並びが悪くなることもあります。永久歯と比べて乳歯は柔らかく、すり減りやすい状態。強い力が加わり続けることで、なかには歯が1/3ほど削れてなくなってしまうこともあります。そうすると、噛み合わせが深くなり、歯並びに影響を及ぼすようになってしまいます」

坂部先生は、上顎と下顎の噛み合わせによっても、歯ぎしりの影響は異なると話します。

例えば、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている「受け口」という噛み合わせの場合、強い歯ぎしりによって、上の歯が削れていってしまうこともあるようです。

また、上下の歯を強く噛み締めてしまうのも、歯ぎしりの症状の1つ。これにより奥歯が歯肉にめりこみ、行き場をなくした前歯が前方に出て「出っ歯」になってしまう可能性も。

「過度な歯ぎしりが見られる場合、『ナイトガード』と呼ばれるマウスピースを就寝中に装着し、歯へのダメージを軽減させる処置をとります。

とはいえ、歯ぎしりを心配して受診する子どもで、治療が必要になるのはほんの数%程度。過度に不安になる必要はありませんが、歯並びは遺伝的な要素だけでなく、歯ぎしりが原因になることもあると覚えておくと良いでしょう」
 

10歳以降に起きやすい「顎関節症」にも注意して



歯ぎしりによる影響の1つとして心配されるのが、10歳以降に起きやすい「顎関節症」です。通常、大人の顎の関節には頭側にくぼみがあり、下顎の丸い骨がはまって動く仕組みになっています。

一方、子どもの頃は頭側のくぼみがまだ形成されておらず、平らな状態。この時期は顎の自由度が高いため、顎関節症になる可能性はほぼないそうです。

上顎のくぼみは、10歳以降になると徐々に形成され始めます。そのため、この時期に強い歯ぎしりが続いてしまうと、顎の関節に負担が及ぶように。場合によっては、顎の関節に痛みを感じたり、口を開いたときにカクンと異音がするなど、顎関節症の症状が現れる可能性もあるとのことです。

***

「歯ぎしりは成長の過程で誰にでも起こり得ること。『歯ぎしりをなくさなくてはいけない』と捉えなくても大丈夫です。ただ、お子さんの夜間の歯ぎしりの音がすごく大きいなど、心配なことがあれば定期的に歯医者に行って問題がないかどうか確認してみてください」

過度な歯ぎしりをしているかどうかは、自己判断では見極めにくいそうです。気になる場合は、早めに歯科医を受診しておくと安心ですね。
 

小児歯科専門医

坂部潤先生

小児歯科専門医。日本大学歯学部附属歯科病院での小児歯科専門医療の実践や、米国UCLA小児矯正科への留学経験を経て、小児歯科医院『キッズデンタル』代表に。継続管理型の小児歯科専門医療により、「将来、どこに行っても恥ずかしくない健康で美しい歯並び」を提供するための治療を目指す。

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