2023年08月01日 カテゴリ:眠り

7時間とは限らない!?専門家が教える「理想の睡眠時間」の見つけ方

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7時間とは限らない!?専門家が教える「理想の睡眠時間」の見つけ方

身体の健康のためにも心の健康のためにも、きちんと眠ることが大切。しかし、この「きちんと」に確固たる数字は当てはまらず、一般的に7時間睡眠がよいとされていますが、実は理想の睡眠時間は人それぞれです。
 
では、自分にとっての理想の睡眠時間を知るには、どうすればいいのか?そして、睡眠時間が短い・長いことによって生じる問題もご紹介。教えてくれるのは、睡眠コンサルタントの友野なお先生です。
 

個人差があるのに「7〜8時間睡眠」が推奨されるワケ

理想の平均睡眠時間を知る前に、まずは日本人の平均睡眠時間をチェックしましょう。
 
2021年に総務省が行った「社会生活基本調査」によれば、日本に暮らす10歳以上の人の平均睡眠時間は7時間54分。一方、厚生労働省が発表している「15分でわかる働く人の睡眠と健康」によれば、働き世代に当たる45歳の人の平均睡眠時間は約6時間30分です。

「学生なのか、働き世代なのか。こうした社会的要因や生活要因にかかわらず、睡眠時間は年齢によって変化します。年齢を重ねるにつれて短くなるのが一般的であり、これは生理現象のひとつ。また、必要な睡眠時間は体質によっても異なり、睡眠時間が極端に短いショートスリーパーや極端に長いロングスリーパーと呼ばれる人も存在します」
 
つまり、理想の睡眠時間は人それぞれ。とはいえ、よく耳にするのが「毎日7〜8時間の睡眠をとりましょう」というフレーズです。『眠りのレシピ』でも繰り返し、理想の睡眠時間の目安を「7〜8時間程度」とお伝えしています。
 
「7〜8時間という数字は、もちろん間違いではありません。これまでに積み上げられてきた研究から、7〜8時間の睡眠をとる人のほうが、それ以下やそれ以上の人に比べて健康的であることが明らかだからです。統計的に7〜8時間の睡眠を必要する人が大多数であり、短時間や長時間睡眠でも健康を維持できる人は全人口のひと握りです」
 
ちなみに、6時間未満の睡眠でも日常生活に支障のないショートスリーパー、10時間以上の睡眠を必要とするロングスリーパーは、それぞれ全人口の5%未満といわれているそう。どちらも生まれながらの体質であり、遺伝的影響ではないか、という説が有力です。
 

睡眠時間だけじゃない!睡眠サイクルにも生じる個人差

7〜8時間程度がひとつの目安ではあるものの、個人差がある理想の睡眠時間。では、私たちの睡眠はどのように成り立っているのでしょうか?これまでも『眠りのレシピ』でお伝えしてきた通り、睡眠にはひとつのサイクルがあります。

「睡眠は深い眠りの『ノンレム睡眠』と浅い眠りの『レム睡眠』の繰り返しからなり、眠りの深さは3段階に分けられます。まず、就寝直後にノンレム睡眠が表れ、最も深い眠りを経て、浅い睡眠であるレム睡眠に移行。レム睡眠から、また深い眠りのノンレム睡眠へと移行していきますが、起床に向け、レム睡眠が表れる時間が長くなっていきます」
 
ノンレム睡眠とレム睡眠から構成される、私たちの睡眠。この2つは一般的に「90分1セット」といわれます。約90分間にノンレム睡眠とレム睡眠が入れ替わり、このサイクルを4〜5回ほど繰り返した後に目覚める、といわれています。
 
「しかし、約90分というサイクルは、あくまでも代表例。学術的な統計によれば、睡眠のサイクルは人によって60〜120分の開きがあります。90分という数字が広く知られていることも確かですが、個人差を無視しては、睡眠を見直す際につまずく可能性があります」
 
友野先生が懸念しているのは、90分1セットを目安に自分の睡眠時間を決めること。「すっきり目覚めるには90分の倍数を睡眠時間にするといい」という説もありますが、これが当てはまるのは“睡眠サイクルが約90分の人に限られる”というわけです。
 

準備も道具も不要!「理想の睡眠時間」を知る方法

ひとつの目安はありつつも、睡眠時間も睡眠サイクルも人それぞれ。すると、自分にとっての理想の睡眠時間を知るにはどうすればいいのか気になる人も多いはず。それを知るには、特別な準備はいりません。必要なのは、時間と意思です。
 
「少なくとも一週間、目覚ましをかけることなく、自然と目覚めるまで眠る生活を続けてください。そのときのポイントが、就寝時間はできるだけ一定にすることです。昼夜逆転しないよう、生活リズムを整えられる環境下で行なってください。自然と眠り、自然と目が覚める日を繰り返すことで、自分に必要な睡眠時間がおのずとみえてきます。おのずと定まってきた睡眠時間こそが、その人にとっての理想の睡眠時間です。ただし、この方法をお試しになる際、女性は生理中は避けたほうがベター。また、昼夜逆転の生活にならざるを得ない、夜勤をされている方も注意が必要です」
 
女性ホルモンの影響により、生理中は睡眠が不安定になりがち。そして、日中の時間帯に眠る生活をしている場合は、睡眠中に光の影響を受けないよう、この方法を試すときはもちろん、日ごろから遮光カーテンを取り入れることが大切だといいます。
 

寝不足も眠りすぎも、日中のパフォーマンスが低下!?



理想の睡眠時間を知ったからには、その睡眠時間を継続することが大切です。友野先生は「理想の睡眠時間をとれていると、日中のパフォーマンスが変わるからです」と指摘します。日中に眠気を感じることがなくなり、活動意欲もアップ。裏を返せば、睡眠時間が不足していると日中に眠気を感じ、活動意欲もなかなか湧いてこないということに。
 
「ほかにも、寝不足には多くのリスクがあります。病気や肥満になりやすいという身体リスク、感情のコントロールが難しくなり、心の病気になりやすくなるメンタルリスク、さらには集中力や発想力の低下といった脳機能にも影響を及ぼし、これらの原因が負のスパイラルを引き起こした結果、不登校や引きこもりといった行動リスクにもつながるのです」
 
また、反対に長く寝すぎるのも良くありません。特に休日はついつい長く寝てしまいがちですが、その影響から夜になっても眠くならず、夜更かしをする結果に。すると、翌日のパフォーマンスが低下するほか、睡眠のリズムも乱れてしまうといいます。
 
「睡眠時間は長すぎても短すぎても良くありません。心身の健康を維持するためにも、日中のパフォーマンスを上げ、充実した毎日を送るためにも理想の睡眠時間を知り、それに則った規則正しい就寝・起床を心掛けるようにしましょう」
 
***
 
「これも日本人が勤勉だからでしょうか。仕事に費やせる時間を長くするため、ショートスリーパーになろうと努力される方がいます」と友野先生。
 
しかし、短時間でも元気に活動できるのは、あくまでも体質。ショートスリーパーになることはできず、無理をして睡眠時間を削っては、かえって日中のパフォーマンスが低下してしまいます。そうならないためにも、適切な睡眠時間を知り、とることが大切なのです。

 

睡眠コンサルタント

友野 なお 先生

睡眠コンサルタント、株式会社SEA Trinity代表取締役。自身が睡眠を改善したことにより、15kgのダイエットと重度のパニック障害の克服、体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程(社会医学・社会疫学・予防医学)にて健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指し、睡眠と健康に関する研究活動を行う。 順天堂大学大学院 修士。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会 正会員。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とし、全国での講演活動、企業の商品開発やコンサルテーション、執筆活動などを行う。

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