2020年04月27日 カテゴリ:眠り

テレワークで生活リズムの乱れが気になる方へ…良い睡眠と免疫力UPのカギは「早起きと朝日」

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テレワークで生活リズムの乱れが気になる方へ…良い睡眠と免疫力UPのカギは「早起きと朝日」
「十分な睡眠をとり、免疫力を高めましょう!」――。
新型コロナウイルスの流行拡大により、にわかに注目を集めている「免疫力」。十分な睡眠をとることは、健康な毎日を過ごすために欠かせませんが、睡眠が免疫力アップにつながる理由は何なのでしょう?
 
そこで今回は、ハーバード大学で教鞭を執る医師/医学博士・根来秀行先生に監修いただき、免疫力と睡眠の関係はもちろん、免疫力を高めるための眠り方まで、わかりやすく解説します!
 

免疫力のピークは思春期!

そもそも免疫とは、カラダを外敵から守る防御機能のこと。外敵とは細菌やウイルスであり、体内で発生するガン細胞も、そのひとつに数えられます。
 
免疫には大きく2種類があり、元来、人間のカラダに備わっているのが「自然免疫」。自然免疫に対し、後天的に生じる免疫を「獲得免疫」といいます。感染症にかかったり、ワクチンを接種したりすることで、カラダが外敵との戦い方を学習。この学習によって、獲得免疫が生じるのです。
 
免疫機能を正常に働かせることが、すなわち、免疫力を高めるということ。「免疫力を高めることで、体外から侵入してくる細菌やウイルスからカラダを守ることができ、病気が発症しづらいカラダを作れるのです」(根来先生)。
 
細菌やウイルスからカラダを守る免疫機能ですが、この機能を果たしているのが白血球。白血球は主に顆粒球・リンパ球・単球に分類され、このうち細菌と戦う役目を担っているのが顆粒球。そして、ウイルスやガン細胞と戦う役目を担っているのがリンパ球です。
 
「免疫力は20代をピークに低下していくといわれ、主な理由はウイルスと戦うリンパ球にあります」。リンパ球はT細胞・B細胞・NK細胞に分類され、ウイルス排除の司令塔として働くのがT細胞です。
 
T細胞は胸腺という場所で主に生成されますが、胸腺がもっとも活発に働くのは思春期。「思春期を終える20代をピークにT細胞を分泌する機能が低下し始め、それに応じて、免疫力も低下してしまうのです」。

 

寝不足ではウイルス性の病気が発症しやすい!?


20代をピークに低下していく免疫力ですが、そこで重要になるのが睡眠!睡眠時間が7時間未満の人は8時間以上眠る人に比べ、なんと3倍も風邪を引きやすいというデータもあるほどです。(※1)
 
では、どうして十分な睡眠をとることが、免疫力アップにつながるのでしょう?
根来先生は「その理由は免疫と自律神経の関係にあります」と指摘します。自律神経とは循環器や消化器をはじめ、体内のあらゆる器官を自律的に司る神経のこと。交感神経と副交感神経の2種類から成ります。
 
先にお伝えしたとおり、免疫機能を担う白血球のうち、細菌と戦うのが顆粒球、ウイルスと戦うのがリンパ球ですが、主に、顆粒球は交感神経に支配され、リンパ球は副交感神経に支配されています。わかりやすく説明すると、交感神経が優位のときに顆粒球が活発に生成され、副交感神経が優位のときにリンパ球が活発に生成されるのです。
 
細菌もウイルスも、私たちにとっては天敵。交感神経と副交感神経のバランスが整っていてこそ、細菌にもウイルスにも強いカラダが作れますが、交感神経は昼間や活動時に優位に働き、副交感神経は夜間や安静時に優位に働くという特徴があります。
 
「夜間の安静時は、すなわち眠りの時間。十分な睡眠をとっていないと副交感神経が充分に働かず、リンパ球の働きが低下します。つまり、ウイルス性の病気を発症しやすくなってしまうのです」(根来先生)。
 
免疫と自律神経の関係性は、これだけにとどまりません。繰り返しになりますが、自律神経とは、体内のあらゆる器官を自律的に司る神経のこと。血管を拡張させたり、反対に収縮させたり、血液の流れを司るのも自律神経の仕事です。
 
免疫機能を担う白血球は、血液に含まれる細胞成分です。体内に張り巡らされた血管を通り、血流にのって全身に行き渡りますが、自律神経が正常に働いていなければ、どうなるでしょう?
 
睡眠不足の状態では、副交感神経が優位に働く時間が足りず、自律神経の乱れを招きかねません。すると末梢への血流が悪くなり、白血球の流れも滞ることになります。その結果、戦うべき細菌やウイルスの存在する現場に白血球が行き渡りにくくなり、免疫力を発揮しづらくなるのです。

 

良い睡眠と免疫力UPのカギは「早起きと朝日」!

しかし、やみくもに長く眠ればいいかというと、そうではありません。「7時間睡眠を目安に、免疫力が高まるような睡眠を得られるよう、日中から準備をすることが大切です」(根来先生)。
 
その準備とは、朝寝坊をしないこと。朝寝坊をせず、布団から出たら、まずは太陽の光を浴びることです。朝6~7時ごろの起床が理想的ですが、朝寝坊をしてはいけない理由は、「メラトニン」というホルモンの性質にあります。
 
メラトニンとは、睡眠を促すホルモンです。メラトニンは起床から約15時間後に分泌量が増え始め、その1・2時間後に自然と眠たくなりますが、この体内時計のスイッチをオンにするために必要なのが、朝日を浴びることなのです。朝日を浴びることでカラダが「朝が来た!」と認識。体内時計がリセットされ、正常に働き始めます。
 
また、日中のウォーキングも、睡眠に向けた準備のひとつ。睡眠を促すメラトニンの前駆体は、「セロトニン」というホルモン物質です。セロトニンが材料となり、メラトニンが分泌されるわけですが、特にウォーキングなどのリズム運動はセロトニンの分泌に効果的!運動は交感神経を優位に働かせる効果もあるため、昼間に交感神経を働かせ、夜間に副交感神経を働かせるという、自律神経のバランスを整えるためにも有用です。
 
こうしてメラトニンがしっかり分泌されると、深い睡眠を得ることができますが、睡眠中に盛んに分泌されるのが、全身の細胞を修復する成長ホルモンです。成長ホルモンは1日の分泌量のうち、約70%が睡眠中に分泌されます。特に、寝入りばなの90分から180分の深いノンレム睡眠中に分泌されるという特徴があります。免疫機能を担う白血球も、ぐっすり熟睡することによって分泌される成長ホルモンの影響を受け、免疫力が強化されるのです。
 
***
 
早起きから始まる日中の準備が熟睡のカギを握り、熟睡することで免疫力がアップ!
不安によって寝つきが悪かったり、リモートワークによって生活のリズムが乱れたり、十分な睡眠がとれていない人も少なくないと思いますが、まずは朝寝坊をしないように心掛け、密集・密室・密接の「3密」を避けながら、ウォーキングをしてみましょう!

ちなみに肌荒れや口内炎が生じたら、それは免疫力低下のシグナル!自律神経が乱れ、カラダの末端まで栄養が行き渡っていない可能性があります。だからといって極度に恐れることなく、やはりまずは、免疫力を高める睡眠を心掛けてくださいね。

  ※1 出典:「Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold.」(2015)

 
     

医師/医学博士

根来秀行 先生

東京都生まれ。東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。ハーバード大学医学部客員教授やパリ大学医学部客員教授をはじめ、数々の大学で教鞭を執る。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。わかりやすい医学解説からテレビやラジオにも多数出演。近著は『大丈夫!何とかなります 毛細血管は若返る』(主婦の友社)。

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