2022年06月30日 カテゴリ:眠り

夜こそ気をつけたい!「睡眠中の熱中症」とその対策

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夜こそ気をつけたい!「睡眠中の熱中症」とその対策
今年もまた、暑さの厳しい季節がやってきました。ジリジリと強い日差しに、高い気温…。例年続く猛暑で、熱中症対策を意識する人も増えているはず。
 
でも実は、熱中症は日中だけではなく夜こそ注意が必要なんです。今回は、睡眠中の熱中症とその予防について、専門家として名高い服部益治先生にお話を伺いました。
 

どんな環境で起こる?夜間の熱中症

 
──夜こそ熱中症に注意が必要とは、どうしてなのでしょうか?
 
服部先生:実は、夏の熱中症の約4割は夜間に発症しています。熱中症の初期症状は、熱中症Ⅰ度の症状にあたる「気分不快」「だるさ」「めまい」「意識消失の立ちくらみ」「筋肉痛」「筋肉のこむら返り」「手足のしびれ」などがあります。特に睡眠中はそれらの症状を自覚できないため、睡眠中の熱中症はいっそう重症化するのです。
 
──なるほど。睡眠中の熱中症が、どんな環境で発症しやすいのか教えてください。
 
服部先生:熱中症の大きな要因として、【①気温:高い】【②湿度:多い】【③風:少ない】の3つが挙げられます。
 
──あれ…夜は昼よりも気温が下がりますよね?
 
服部先生:たしかに、夜は日が沈み気温は下がります。ですが、昼間に壁や天井が暖められ、蓄えられた熱が放射熱となり、室温を高くしてしまうんです。夜間は熱中症にならないと思われている背景には、「夜は日照がなく、気温が下がるので安心!」という誤った思い込みがあります。
 
また、防犯のため部屋を閉めきるので、自然の風がシャットダウンされ、想像以上の“熱中症危険環境”が存在しているのです。
 
 

意外と知らない!寝ている間の脱水に注意

 
服部先生によると、日常生活で1日あたりに失う水分量は、尿で1,500ml、汗で600ml、「見えない汗」といわれる呼吸で300ml。会話が多いと「見えない汗」で失う水分量はさらに増えるのだそう!

服部先生:生活シーンでは、体温上昇を抑える機能として「発汗」があります。さまざまなスポーツで多量の汗を失うのは予想できますが、睡眠中は知らないうちに汗が蒸発し、冬でも200ml前後、熱帯夜には500ml以上と、想像以上の水分を失っているんです。スポーツをする際には熱中症予防のため、開始前にまずは500~1,500mlの水を飲むのが常識ですが、この考え方からも入浴前や睡眠前にも水分補給が必要であるという話に納得していただけるのではないでしょうか。
 
 

今日からできる睡眠中の熱中症予防

 
最後に、夜間の熱中症を防ぐための対策を教えていただきました。
 

①睡眠環境を整える

寝具はクールダウン効果が高いもの、パジャマは吸汗性があるものを選び、少しでも快適な睡眠をとって翌日に疲れを残さないように心がけましょう。もちろん熱がこもった夜間の室内、特に寝室では、エアコンを(除湿を含め)つけ、カラダに直接風を当てるのではなく、室内に風の対流を起こさせる扇風機の首振り(弱めでOK)を活用しましょう。
   

②水分補給を怠らない

入浴前や睡眠前に、コップ1杯(約200ml)の水を飲むと良いでしょう。水を飲むのに抵抗を感じる方は、水に寒天を加えた「水ゼリー」もおすすめです(甘さ控えめのスポーツドリンクでもOK)。
 
\気をつけたいポイント/
利尿作用のあるアルコール類、コーヒー、緑茶を飲むと、夜中のトイレで安眠が妨げられるだけでなく、脱水症状につながります。寝る前に飲むのは控えましょう。
 
服部先生:熱中症で脱水が進むと、血液がドロドロ状態になって流れが悪くなり、さらにひどくなると詰まってしまいます。これが脳の血管で発生すれば脳梗塞(のうこうそく)に、心臓で発生すれば心筋梗塞(しんきんこうそく)になります。厚生労働省のポスターのキャッチコピーにもある「目覚めの1杯、寝る前の1杯」を実践しましょう。
 
***
 
眠っている間の熱中症は、症状を自覚できないからこそ「予防」することが大切なのですね。今回教えていただいた対策の中には、快適な眠りにつながるポイントも!日々の暑さで疲れやすく、体調を崩しやすい季節ですが、十分な睡眠と水分補給を忘れずに、元気に過ごしたいものです。
 
服部先生、ありがとうございました!
 
nishikawaが運営する睡眠科学研究所では外部機関と連携して、熱中症と睡眠の関係についても調査を行っています。詳しくはこちら
 

服部益治 先生

兵庫医科大学 特別招聘教授・医療福祉センターさくら 院長。日本小児科学会 (専門医)、日本腎臓学会 (指導医・専門医)、兵庫県小児科医会 (顧問)、日本夜尿症学会(常任理事)などに所属。著書に、『腎・泌尿器疾患診療マニュアル(共著)』(日本医師会)、『腎臓病の食事指導ハンドブック(共著)』(南江堂)、『保健医療ソーシャルワーク実践(共著)』(中央法規出版)、『子どもの臨床検査-脱水(共著)』(診断と治療社)など。

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